労働者は原則として1日8時間、1週間40時間までと労働時間が定められています。それ以上の労働時間を要した場合には時間外労働として残業代が発生します。
毎月の所定賃金÷ひと月の所定労働時間×1.25×時間外労働時間
固定残業代が支払われていた場合でも残業代請求が認められる場合があります。
①当該手当が実質的に時間外・深夜割増賃金を含める趣旨で合意されていること
②通常の賃金部分と時間外・深夜割増賃金部分が明確に区別できること
③通常の賃金部分から計算した時間外・深夜割増賃金との過不足額が計算できること
という要件を満たしていなければ残業代として有効ではありません。
むしろ残業代を計算する際の基礎賃金に組み込まれることになります。
管理監督者の方は、残業代を請求することができません。ただ、会社内で管理職のような役職に就いていたとしても、法律上の管理監督者に該当するとは限りません。
管理監督者とは、事業者に代わって労務管理を行う地位にあり、労働者の労働時間を決定し、労働時間に従った労働者の作業を監督する者をいい、これに該当しない限り、管理職のような役職に就いていても残業代を請求することができます。
会社と従業員との合意によって、年間の賃金総額や支払い方法を決定しておくのが年俸制です。年俸制を採用している会社に対して残業代を請求すると、会社から年俸として決定した金額に残業代も含まれているとの反論されることがありますが、年俸制だからといって即、残業代が認められないわけではないので注意しましょう。
年俸制が採用されている会社において、年俸に残業代が含まれていると認められるためには、契約内容や就業規則において残業代の金額が明示されているか、容易に計算できるようになっていなければなりません。そうでない場合には年俸とは別途残業代を請求することができます。
年俸制の場合の残業代の計算方法は、年俸として決定した金額を12で割った金額を基礎賃金とします。就業規則において、12で割るのではない計算方法を採用している場合でも同様に12で割った金額を基礎賃金とします。なお、年俸制の従業員には残業代を支払わないとする就業規則の規定は労働基準法に反し無効です。
残業代請求が可能なのは、残業代を支払うべき日から2年間です。2年を経過する前に弁護士に相談しましょう。
会社が従業員を解雇するには、労働基準法等の法律に定められた厳格な要件を満たしていなければなりません。この要件を満たしていなければ、その解雇は無効であり、職場復帰及び働けなかった期間の給料を請求できます。
解雇には、会社の秩序を乱す行為をしたとしてされる「懲戒解雇」、会社が経営のために人員削減をする「整理解雇」、遅刻や技術不足等を理由とする「普通解雇」があります。いずれの場合においても解雇を実行するためには厳格な要件を満たしていなければ解雇は有効にならないので、解雇について納得できない場合には一度弁護士に相談することをおすすめします。
会社からは解雇という形式はとられておらず、最終的には自分で辞表を提出して退職した場合でも、上司から強く退職を勧められたり、退職を強要されたりするようなことを言われて退職せざるを得なくなったような場合にも不当解雇になりえます。このような場合でも弁護士に相談して、不当解雇でないか確認しましょう。
契約社員等の一定期間の雇用契約で、その期間が経過した時点で契約が打ち切られることはよくあります。しかし、何度も更新が繰り返され、当然のように次も更新されると考えるのが妥当な場合には、契約の打ち切りが不当解雇となる場合があります。契約の打ち切りにあった方も弁護士にご相談ください。
解雇を適法に行うためには
①就業規則に解雇の種類(減給、解雇等)が規定されていること
②就業規則に解雇事由(情報漏えい、虚偽申告等)が規定されていること
③従業員の行為が就業規則の解雇事由に該当すること
④解雇に客観的な理由があり、社会通念上相当であるといえること
が必要です。④の要件の判断の際に、解雇が重すぎないか、同じことをした他の従業員と不平等ではないか、従業員の話を聞く等の手続きをきちんと踏んだかということが考慮されます。
まずは、内容証明郵便によって解雇無効の主張を会社に送り、任意での交渉に入ります。解雇理由証明書や就業規則を検討し解雇無効を主張することになりますが、これらの資料を所持していなければ会社にその資料の提出を要求し、具体的に解雇無効について検討し、交渉をしていきます。
任意交渉で話がまとまらなければ、労働審判という裁判所での手続きの申し立てを行います。いきなり裁判をすることも可能ですが、労働審判で審判員を挟んで話し合いをすれば、こちらに有利な和解案を出してもらえる可能性があるうえ、短期間で終結するので労働審判から行うのが通常です。
労働審判で審判結果が出て納得いかなければ、裁判をすることになります。お互いに有利な証拠を出し合って、裁判官に判断してもらいます。
解雇無効の主張をする場合、どのように職場復帰するか決めていなければスムーズに復職できないので、復帰方法も含めて具体的に決定することを目指します。気まずくて職場復帰することができないという場合は、金銭的に解決することになります。
セクハラは言葉や行動で性的な嫌がらせをすることで、パワハラは職場での地位を利用した嫌がらせやいじめのことです。これらの行為がエスカレートすると精神的に追い込まれ、仕事どころではなくなるはずです。このような被害にあっている場合には会社や加害者に慰謝料を請求したり、会社に職場環境の改善を要求したりすることになります。
セクハラ・パワハラは程度の問題もあり、法的に問題があるかの判断が困難ですので、もしセクハラ・パワハラではないかと思ったら弁護士にご相談ください。
当然、会社と従業員が一度合意した給料等の労働条件を会社が勝手に引き下げることは原則としてできません。しかし、当事者間の合意、適法な就業規則の変更及び労働契約の変更、適法な労働協約の変更・それに伴う就業規則及び労働契約の変更がなされた場合には、賃金の減額等の労働条件の引き下げを行うことができます。
これらの変更を適法に行うための要件は、労働基準法等の法律で厳格に定められています。これらの要件が満たされなければ労働条件の引き下げは無効であり、従来通りの労働条件が認められることになります。もし、給料が勝手に減額されて納得できない場合には弁護士にご相談ください。
労災制度は仕事中や通勤中に従業員がけがをしたり、死亡したりした場合に、本人や遺族に金銭給付を行う保険制度です。会社が安全に働かせる義務を怠ったとして損害賠償請求をするよりも簡単な要件で保険金給付が認められるので、可能な限り労災制度を利用すべきです。
仕事中・通勤中にけがをしたり死亡したりした場合には、どのような請求ができるのか、労災制度の利用手続き等についてご相談ください。
部署異動、転勤、出向等の人事異動は一般的に様々な会社で行われているため、当然のように受け入れる必要があると思っている方も多いかもしれません。しかし、どんな人事異動も有効なわけではなく
①異動に業務上の必要性があったか
②異動命令が不当な動機・目的で行われていないか
③労働者に著しく職務上または生活上の不利益が与えられないか
という要件が認められていなければ違法な人事異動として無効となります。人事異動に納得できなければ一度弁護士にご相談ください。
会社から内定の通知を受け労働契約が成立したにも関わらず、入社前に内定を取り消された場合、入社前だからといって労働契約が成立している以上、内定取り消しは解雇と同様の要件が必要となります。この要件が満たされていなければ内定取り消しは無効となり入社できることになります。内定取り消しを言われた場合には一度弁護士にご相談ください。